従順な戦士

                      百瀬 邦孝

 

従順な戦士は従順な戦士を育てるという

軍隊という管理の中の営みに於いて

従順でなければその体制は崩壊してしまうから

それは

軍隊という体制の宿命であるのだ

だから

従順な戦士は従順な戦士をそだてるしかないのだ

 

教育は違う

教育には指導という不可欠な要素があり

指導という営みの中には指導する者の意志と

指導を受ける者の

指導を受けたいと願う気持ちの中に成り立つ民主的関係が存在する

管理と統制という名でこの関係を捨て去ったとき

従順な教育は従順な子どもを育て始める

 

そもそも教育は

一人一人の子どもの人格の完成(教育基本法第1条)を求めている

これは教育の普遍的原理であって

教育の崇高な任務である

従順な教育も従順な子どももいらない

                    (2001年・教育事報「あらかわ」)


自分の色と音と言葉で
                   百瀬邦孝

卒業おめでとう
おわるときは、はじまりのとき
はじまりのときは
新しいことを思い
新しいことに接し
新しい人と出会うとき

 

そんな…
新しいうずの中に
思いきって飛び込んでいくと
新しい色があり
新しい音があり
新しい言葉があるにちがいない

 

そんな…
色や音や言葉が
これからの君を形作っていく

 

学校での勉強は
知識の習得もさることながら
自分のやりたいこと、自分ならではの人生の道を
見つけるのが
主たる狙いであることからすれば
いよいよ
中学への道は
そのための学習の序曲だ

 

希望というのは
そうした
自分と社会の未来を
確かに希むことであるから
常に新しいこととの出会いの連続だ

自分自身の
色と音と言葉をもって
しぶとく
めげずに
前へ前へ
歩んでいってください


生きたあかし

                             百瀬 邦孝

獣は死して皮を残すが

   人は死して何を残すか

画家は死して画を残し

学者は死して論文を残すが

   教師は死して何を残すか


我死して何を残さん

我死すとも皮は残らん


人死すとも残された音楽は民謡と化し

残された文学は人の心を揺らす

教師死すとも人の心に絆を残すか

良きにつけ悪しきにつけ

   絆を残すか


教師の生きたあかし

   何処にぞあらん

                 (1977.6)